広島での細川俊夫《リアの物語》公演のお知らせなど

Hiroshima Happy New Ear Opera II:細川俊夫《リアの物語》公演flyer

Hiroshima Happy New Ear Opera II:細川俊夫《リアの物語》公演flyer

早いもので、1月も半ばを過ぎました。原稿執筆に追われたこの半月でした。仕事の一つは、ある事典のためのヴァルター・ベンヤミンについての大項目の原稿の執筆で、彼の哲学を「経験」をキーワードに、以前に書いた中央公論新社の『哲学の歴史』第10巻所収の拙稿とは異なった角度から紹介する内容となりました。こちらは年内にはお届けできるものと思います。もう一つの仕事は、Hiroshima Happy New Ear Operaの第2回公演として行なわれる、細川俊夫さんのオペラ《リアの物語》の公演のプログラム・ノート。この細川さんの最初のオペラの原題が“Vision of Lear”であることに着目しつつ、これが能の精神からの新たなオペラの誕生を印づける作品であることを指摘する内容のものを書きました。その公演の初日まで二週間を切りましたので、広島での《リアの物語》の公演のことを、ここでもお知らせしておきます。

2012年1月の細川さんの《班女》の公演に続くHiroshima Happy New Ear Operaの第二回の公演として、《リアの物語》が1月30日(金)と2月1日(日)に広島市のアステールプラザ中ホールで上演されます。この作品の16年ぶりの日本での上演となります。2年前の《班女》と同様、能舞台を使って上演されるのが、何よりも注目されるところでしょう。細川さんが、能の精神に深く根差しながら、独自の音楽でシェイクスピアの『リア王』の核心に迫った最初のオペラ、そして従来の「オペラ」を超える新しいオペラが、この能舞台でどのように響くか、期待が膨らみます。また、能にインスパイアされつつ振り付けや舞台演出を続けてきたルーカ・ヴェジェッティさんによる演出も、能舞台を、そして能のさまざまな特性をフルに生かして、登場人物たちの魂を舞台に浮かび上がらせることでしょう。

リア役を歌うのは、欧米の数々の劇場で活躍するマレク・M・ガシュテッキさん。また、リアの三人の娘の役を歌うのは、《班女》で素晴らしい歌を聴かせた藤井美雪さんと半田美和子さん、そしてひろしまオペラルネッサンスで目覚ましい活躍を示している柳清美さんです。この四名をはじめ、いずれも実力ある歌手たちがキャストを務めるのも、期待をいっそう高めます。昨秋のモノドラマ《大鴉》の公演で素晴らしい指揮を見せた、川瀬賢太郎さんが指揮する広島交響楽団の演奏も聴き逃せません。1月30日が19時開演、2月1日が14時開演です。全国からこの《リアの物語》の公演にお越しくださることを願っております。満場の聴衆とともに、日本からの新たなオペラの可能性が開ける瞬間を見届けたいと思います。

最後に、本ウェブサイトに、別のウェブログに掲載していた書評のいくつかを、過去の資料の確認も兼ねて転載しておいたことをお伝えしておきます。すでに10年近く前に書いたものですから、今となっては拙いところが目立ちますが、2005年の後半から翌年にかけて、かなり集中的に読みつつ考えたことが、現在に至る思考の骨格を形成していることを、あらためて顧みたところです。少し舞台裏を明かしているところもあるかもしれません。また、ポツダムでの研究滞在を終えて帰国したところで被爆と敗戦から60年目の年を迎え、何とかしなければ、という思いが強かったのも確かです。被爆と敗戦から70年となる今年、先の戦争を引き起こした要因が未だ精算されないなか、原爆に遭った人々の思いを踏みにじるかたちで核の脅威が広がろうとしている歴史的な流れに対峙しながら、被爆の記憶を継承することの現在的な、そして世界的な可能性を探らなければ、と考えつつあるところです。

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広島での細川俊夫《リアの物語》公演のお知らせなど」への3件のフィードバック

  1. 細川さんの《リアの物語》の広島初演、いよいよ今夕より二日にわたって開催されます。昨夜ゲネプロを見せていただきましたが、今回の広島での《リアの物語》の舞台は、能の精神を生かした演出で、その洗練された象徴性は見事なものに仕上がってきています。また、歌手たちをはじめ、音楽家たちの演奏からは、細川さんの音楽への深い理解が感じられます。どうかご期待ください。本日1月30日(金)19:00よりアステールプラザ中ホールにて行なわれる公演のチケットについては、主催者のひろしまオペラ・音楽推進委員会(082-244-8000)にお問い合わせください。http://www.cf.city.hiroshima.jp/naka…/opera/music/index.html

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  2. 昨晩、初日の公演が盛況のうちに終わりました。大変寒いなか、また足下の悪いなかお越しくださったみなさまに感謝申し上げます。人間の悪が破局を招き寄せるさまが、凄まじいまでの緊張感をもって凝縮されたかたちで演じられるとともに、絶望の奥底から生の息遣いとしての歌が滲み出る感銘深い舞台となったと思います。求心力と表現の振幅を兼ね備えた演奏も特筆されるべきでしょう。明日午後の公演もぜひご期待ください。明日も昨晩同様、プレ・トークとアフター・トークが行なわれます。

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  3. 2015年1月30日と2月1日の二日にわたり、Hiroshima Happy New Ear Opera IIとしてアステールプラザの能舞台を使って行なわれた、細川俊夫さんのオペラ《リアの物語》の公演が終了しました。両日ともほぼ満場の聴衆のみなさまの集中力もあって、人間の愚かさを抉り出すシェイクスピアの言葉の力と、生の息吹を響かせる音楽の力とが凝縮されたかたちで響く公演になったと思います。ご来場くださった方々に重ねて感謝申し上げます。今回の《リアの物語》の公演を、主催組織であるひろしまオペラ・音楽推進委員会の委員の一人として、プログラム・ノートを執筆し、日本語字幕の制作に携わり、プレ・トークとアフター・トークの司会を務めるかたちでお手伝いさせていただきました。こうしたかたちで今回の公演に関わることができたことを、非常に光栄に思っています。このような立場ではありますが、今回の公演に接して率直に考えたところを、このサイトにも書き留めておいた次第です。来場してくださった方々が公演を振り返る際の一助になれば幸いです。

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