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Eine Flaschenpost

「詩は、そう、それは言葉の現われる一つの形式で、その本質からして対話的なのですから、一つの投壜通信なのでしょう。それは──もちろん、いつも希望に満ちてはいないにしても──信念の下に投げ出され、いつかどこかの岸に打ち寄せられることがあるのかもしれません。おそらくは心の岸辺に。」 (Paul Celan)

このように、詩人パウル・ツェランにとって詩とは「投壜通信  (eine Flaschenpost) 」です。投壜通信、それは危機的な状況のなかから密かに、未知の他者へ向けて波間に投げ出されるものでしょう。いつかその「心の岸辺」に流れ着くことへの祈りを込めて。もしかすると、狭義の詩ばかりでなく、「うたう」ことを内に秘めた言葉も、一つの投壜通信として差し出されるのかもしれません。今日世界を覆っている情報の喧騒のなかでは、あたかも投壜通信のように、密やかに差し出される言葉だけが、自分がなり代わることのできない他者とのあいだで応え合い、生命の息吹を響かせる言葉でありうるようにさえ思えます。このFlaschenpostには、どこか息苦しい今ここから、折に触れて、一つの投壜通信であることを求めて書いたものが込められています。もし、ほんの一瞬でも立ち止まってご一読いただけるなら幸いです。

このWebsiteは、私の近況、著作の紹介、私が関係する催し物のお知らせ、文化に関わるさまざまな活動の記録、旅行記や雑感などを記したクロニクルのほか、演奏会評、オペラや演劇などの公演の批評、書評、エッセイなどによって構成されています。

2012年12月31日 柿木 伸之

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